◎インタビュアー・旭那美里(A) 水無月あお(M)
A 好きなアニメ映画のベスト3なんて決められますか?
若木 たくさんあるから難しいですね。ガンダムが好きな山川さんのために富野監督シバリで3つあげると、『機動戦士ガンダム2 哀・戦士編』『逆襲のシャア』『伝説巨神イデオン 発動篇』。
富野作品以外でのベスト3だと、『銀河鉄道999』『マクロスプラス』『デジモンアドベンチャー ぼくらのウォーゲーム!』です。
A コミケに作品をお出しになってますよね。コミケで他の作品のパロディではなくて、『ハイスクール・オーラバスター』とか、あえて若木先生ご自身の作品を書かれていますよね。商業誌じゃなくて同人誌でお出しになる意味は?
若木 商業誌の世界は私にとって、すごく神聖な世界だからだと思うんですよ。商業誌、読者の人に正当なルートでわたるものっていうのは、絶対に素晴らしいものでなければいけない。絶対に。
それは私の中の聖域、サンクチュアリなんです。
そうすると、皆さんのところに届く前に、自分の机の上で取捨選択しているものがいろいろあるんです。これはまだその聖域にあげるものじゃない、とか。これは自分なりに良いと思っているけれども、皆さんとの勝負の場所に出すにはふさわしくない方向性のように思う、とか。
あとコバルト文庫っていう場所の性格もありますから、他の場所ならOKだけど、
コバルト文庫で私がやりたいこととは違う、とか。そういうものが余って。
で、何か作品を書こうというときに、その手前で、準備の練習、習作っていえばい
いのかな……たとえば『イズミ幻戦記』久しぶりに書くんだけど、ちゃんと書き方を
おぼえているかしら、ウォーミングアップに短いもの1本書いとこう、とか。そんな
ふうに、訓練だと思って書いたものがあって。でも、誰にも見せずに机のひきだしに
しまっておいたら作品が可哀想だったので、じゃあ、それが練習であったり、私自身
がOKでもコバルト文庫にはふさわしくはないなと思ったものは、そういう但し書き
をつけて、この話はこういう意図でこういう風に書いたけど、あえて商業誌には発表
したくないのだ、と説明したうえで、同人誌で出したりしました。
でも、だんだん練習とかは、あんまりしなくなってきた……というか、しなくても
よくなってきた。また練習したくなるかもしれないですけど。
それと、同人誌世界の規模が大きくなって、アンダーグラウンドでなく、そこで何
かをやることがオフィシャルな活動であるような印象になってきた、商業誌に近づい
てきたっていう気もします。
だから、今はあんまり同人誌で作品を出そうとは思ってないんです。しばらくそう
いう試みをしていた時期もあった、ということで。
M 他の作家さんは、先生のライバルだったり、目標だったりしますか?
若木 すごくします、はい。
素晴らしい作品を見つけると、もう嬉しくって思わず、オマエ素晴らしい~、敵だ
~って、本人に言いに行くんですよ(笑)。
こんなこと言ってると勘違いされるんですけど、いや、私の言い方も変でよくない
なと思うんですけど、あなた素晴らしいですー、ちくしょうくやしいぞ、オマエなん
か倒してやるぅって言いたくなるんです。若木さんは私をいじめたいのか好きなのか
分からんってなるんですけど、もちろんすごく好きなんで。
好きな作家がいるってことは、戦うことができるってことなので。私と戦ってくだ
さいって言いに行きたくなるんですね。あとは、自分に自信がないときや、相手のほ
うが本当にずっと格上でどうにもかなわんな、ってときなんかは、憎いなー憎いなー
と小声でブツブツ言ってますね(笑)。しばらく経ってから、ずっとニクかったんで
すって白状しに行くとか。
好きですね、やっぱり素敵な人達が居てくださるというのは。
(続く)
※初出 2002年「文学メルマ!」