藤谷直季 (ten blank) personal interview

――最近何してるの? 近況を教えてください。

 わかんない。さっきご飯食べてたことはわかってるけど他のことって今いちわからない。あっそうだあのね、僕のこっちの指、バンドエイド貼ってあるのわかる? 楽譜の紙で切ったらしいんだけど、地味に流血してたらうちの坂本君が「まわりに迷惑だから」とバンドエイドを貼ってくれたのですが、そのシチュエーションにすこしドキドキしました。そういう近況です。

――出身はどこですか?

 日本です。

――それは国籍では?

 あっ海外にいたこともあります。子供のとき。でも日本生まれ。

――和食と洋食どっちが好き?

 和食のほうがヘンな音階を感じます。特にご飯とお味噌汁に。

――ゆるせないことはありますか。

 ありすぎる。特に自分について。自分で買ったものはまだいいとしてもね、人から貰った物をなくしちゃうと自分が許せない。後悔で一晩くらい悶々とします。そうすると次の朝にベッドの下から出てきたりします。

――他人にゆるしてほしいことはありますか。

 才能。
                               
――日常生活で気にかけることは?

 とりあえず服は着よう。つまりね、あんまりくだけた恰好じゃなくていつ突然外出してもいいくらいの服は着ておこう、です。

――最近、泣いたことはありますか。

 ゆうべ泣きました。電話の、留守録の内容を聞く前に消しちゃって。

――尊敬する人は?

 手塚治虫さん。あっこれ僕の師というより友達の影響だ。僕が全般に尊敬するのはね、女の人。どうやっても勝てないから。

――作詞・作曲の悩みを教えてください。

 僕、ヘタだから。いやになる、ほんとに泣きたくなる。いつもうんとがんばってるんだけど誰かに「フン」とか「ケッ」とか言われるかもしれないので……あのね、ここ笑うとこじゃなくて本当に悩んでる。
 これだ! ってのが上から降ってきたときはやっぱり僕天才だなと思うんだけど……なんだろう、自分の手が天才さに追っつかない感じ? ごめんね、何言ってんだかわかんないね。もっと向上したいという話です。

――好きな女性のタイプは?

 タイプって何? 血液型とか? 勇気と誇りのある人は好き。でもこの条件は人類全般にあてはまるよね。そうじゃなくて誰が好き? って訊いてよ。

――今、好きな人は?

 朱音ちゃんと坂本君が好き。高岡君とは昨日けんかしたので除外。おとなげないけど、あのねえ、ほんとにねえ、あのひと俺に対しては随分ねえ……。心の傷が癒えたらまた好きになります。

――悲しいときはどうしますか?

 どうしようもない。

――あなたにとって音楽とは何ですか?

 …………………………音楽は音楽で、それ以外ちょっと言えない。

――あなたのファンをどう思いますか?

 僕、本当のところ「ファン」て言葉を使うのあまり好きじゃない。なんか集合体っぽいから。それってひとりひとりの顔が見えなくなる感じがする。「ファンレター」って言葉もやだ、手紙は手紙でしょ。
 僕たちの音楽を聴いて価値を認めてくれるひとがいることはとても嬉しいです。そういう大事なひとたちにお金を出してもらうのが恥ずかしいような仕事は、僕は絶対にしない。

――いちばん大切にしているものは?

 生命。僕の。とにかく死にたくない。ここは踏んばらなくちゃと思ってる。だって僕の知りあいみんな、僕がうっかり足をふみはずすのを怖がるから。

――最後に訊きます。今、いちばん欲しいものは?

 …………ミルクティー。熱いやつ。そんな感じ。(笑)

――けっこう無欲なんですか?

 ええっ!? そんなこと絶対にないよ!!

※初出 1998年7月(商業誌未発表)

その後

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ちなみに、たくみも飼い主もたいしたことはなかったー。よかったー。
ふたりして、まじめにクスリ飲んでます。

ほんとはかっこいいんです

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ヒー
なんだろうこの猫
ルードウィヒヴァンベートーベンみたいにモサモサ頭で
総合的にヨボヨボですが
しょうごです、しょうごですったら…
たくみが膀胱炎ぎみだったので動物病院につれていったら寒い日だったので飼い主もまんまと風邪ひいてー
一家に2匹の病人(?)を肩に背負って、ふんばったしょうごだった。
おつかれー。

補足ー

なにごとなのかというとオーヴァークロームの話でした。

「僕」=有栖川マヒロです。

若木 未生
LOVE WAY―GLASS HEART

「LOVE WAY 2」を書く際に、このスケッチを下敷きにしてます。たぶん読み比べるとバレる。

B/W(クロ/シロ)

 僕らの騒音を呑みくだす戯びに、どうぞ、ようこそ。

 僕はスイッチを指で弾くだけの役割であとは冷静に狂った民衆を蔑んで眺めよう。

 僕の隣をゆきすぎた眩しい綺麗すぎる白い純白の光芒が斜めにあなたたちに降り注ぐ。

 僕は決して狂わずに狂乱するあなたたちをゆっくりと眺めよう。

 僕の後ろをゆきすぎた殺伐の塊は世の終わりのような黒。

 僕は首をすくめながらあなたたちを漫然と眺めよう。

 僕の目の前をゆきすぎる一つきりの影をさあ皆さん存分に喰べ尽くそう。

 let’s FxxK IT !

 希少価値の生物、こんなものこの場所にしかないからね。

 山積した鍵盤の自動演奏、僕たちは余り何も感じずに過ぎていく。

 ヒトの鼓動より速い渦、踏みならす黒い影の踵、踊る、光を斬り裂く指先のそのしめす行方を誰の視神経も見切れない、ハハハハハザマアミロ、めぐるめぐる器官、血流、人工音の鎖、死ね死ね死ね死んじまえ魂がないのなら!! 断罪する黒い異常な濡れた両眼が僕たちを生きながらに処刑するからあなたたちの陶酔は生への渇望。叩き殺す熱量、同等にして不可避の救済。hosanna !

 なんて子供っぽい生き方でさ。

 肉声を嗄らして叫んで教徒たちを操る危ない眼をして狂うあなたの最後の意識を僕の冷たく硬い指が脱がして、スイッチをいれる。

 スイッチをいれる。

 I’ve got you.

※初出 1997年12月 (商業誌未発表作品)