寄り添う

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うしろあたま(複数)…
ザッツ・ポカフカ…

以下は
ポカフカしてない飼い主のありさま…
風邪ぼちぼちです。諸事ご連絡が滞って申し訳ありません(;_;)>各位
そして
アーカイヴの「ラッシュ」、とうとう終了です。毎週のおつきあい、どうもありがとうございました!!
来週からどうするかはまだ決めてません…どうしようかな。
今回はガンダム公開日に映画館にいけるのか。それもまだわからない。ガンダムキャンペーンだからって貝印のヒゲソリも買っちゃうのか。色々わからない。わからないけど未来を信じよう!
(かいぬしはこんらんしている…)
(いつもか)

ラッシュ 最終回

 ここに棲む僕らの耳はだいたいイカれている。
 恒常的に非常識にでかい音を聴きすぎて鼓膜は摩滅するばかりだ。
 僕の脳細胞はつぎつぎと摩滅してろくに誰の顔も憶えない。
 さざめくライトの熱を浴びて眼は焼ける。
 僕は、溺れかけた必死の船長がつかむ舵のように黒いスティックを両手につかまえて、4カウントを叫ぶ。
 そのときだけ僕がすべてを操っているようだ。
 あァ死んじまうな。
 そんなこともよくあることだ。
 僕らをとりかこむ見せ物小屋の檻の内外に繋がれた酔狂なやつらがみんなよろこんで何かを臓腑から吐きだすように口をあけてロックスターの名を呼ぶんだ。
 左側から白く厚く、するどい刃先が来る。
 ギター。
 僕は、左の中指の骨の芯から冷たい電気に侵入され満たされて凍りつきそうだ。
 本能の知っているやりかたで僕の左手は時間の急所を狙って一発ずつリズムの弾丸を撃ちこむ。
 斬られるな。撃ちころせ。
 無慈悲に。
 そんな僕らの殺戮を猶斗は気にかけない。
 歌った。
 彼を追う光芒と歓声の軌跡を腕で描いて、とびこむんだ。炉心の火に。
 笑うんだ。
 まだ、もっと。
 僕らがはじくおどけた変拍子の棘の上を、たちの悪い猫のように媚をふりまいてスキップした。
 走れ。
 こぶしをふりあげる群衆のひとつひとつの顔を殴るように、歌った。
 黒いエナメルの背中が僕の正面で酸素を吸いこんでは火をつけて吐きだす。
 僕は、その背中からすべての装飾を剥いで裸の肩肉を喰いちぎりたい。野蛮に。
 どうだいジェントルメン。
 腹は減ってんのかい。
 どうだい。
 生きてけんのかい。
 ??生贄の血を飲み、肉を喰え。きっと葡萄酒とパンの味がするぜ。
 今夜はキリストがいるぜ。
 ああ僕の身体が勝手に操られて止まらなくなって連れていかれる先はどこだか知っている。
 一瞬だけさ。
 脈拍より速くかけめぐる真っ白な真っ白な光が来るんだ。
 歯をくいしばって見ろ。
 僕らの醜悪な四肢の叩きだす原始の響き。
 つよい光が拡がって、遠く、高波のように観客の頭上を嘗めていった。
 悦楽に啼いてとりみだすあの子たちの顔を、鮮明に暴いていく。
 闇の海の彼方まで僕らの叩く生命の塊がまっすぐに貫通してゆくのが僕の場所からは見える。
 とても見晴らしが良かった。
 汗だかエビアンの水だか判別のつかない輝きの飛沫をはねとばして猶斗が。
 僕らの舞台の真ん中で一度、歌いながら、勢いのついた鞠のように肩から転がった。まばゆい天の鉄骨を睨んで笑った。摩滅して衰退する肉に逆らって、はねおきた。そうだ、行っちまえ。僕は、いっそう左側の殺意に従って、右側のライドシンバルを殴る。行っちまえ、と叫んだ。
 ふりむいて猶斗が僕らを見た。僕を、ベーシストを、キーボーディストを、ギタリストを。彼を貪り殺戮する僕らを。それは、なんだったのだろう。怯えのようでも、嘲笑のようでも、陶酔のようでもある表情で、頬を痙攣させた。
(歌えねかッたら、死んじゃうなァ)
 なんでもないと僕は思う。
 なんでもありゃしねえ。
 ただの震えだ。
 猶斗が喉を覆うかたちに掌をあげる。光が彼を追う。帯電した空気がふきつける。嵐のように膨張する音圧。歓声と放熱。
 なにもかもを蹴散らすみたいに猶斗がそのとき、跳んだ。
 ステージのへりの、その先へ。
 屹立する断崖の向こうへ。
 消えた。
「??落ちたアッ」
 どこかでだれかの悲鳴がした。
 最前列の柵に我をわすれて腕をのばすレミングの集団が殺到する。
 バリケードをおさえる警備のスタッフが将棋倒しの危機に見舞われて凄絶な抵抗をこころみる。
 けれど舞台にいる僕らは、誰ひとり、刻まれるビートの連続を止めずにいた。
 ステージからぬけおちた歌の、ぽかりとした空洞をそのまま持続して、叩いた。
 不恰好な代わりの音で埋めもしなかった。
 ただ、続けた。
 僕は、ひどくかるがると挙がる両腕でタムを順繰りに殴りつける。
 葦宏は、強いピッキングで低音を泳がせながら、お祭り騒ぎのように踵を踏みならして踊っていた。塗りたくった唇をひきつらせて、笑っていた。
 ステージと客席を隔てる、からっぽのオーケストラピットの底に、猶斗は身投げするように落ちて、動かなかった。
 地に這う芋虫みたいにうずくまっていた。
 だけど僕たちは待った。
 音符の間隔はずっと、ひっきりなしに猶斗の名を呼ぶやつらの金切り声で満ちた。
 赤い髪のギタリストが、憎らしいほどに眩しく艶のある弦の切っ先で、疾走する旋律を弾きぬいた。
 僕らの欲望を覚醒させる、響きを。
 なにかに挑む力で。
 弾いた。
 そうして僕たちは、待った。
 待ちつづけた。
 ひとすじの光が、僕らの見つめる先に降りそそぐ。
 ステージの下へ。
 そこから歌がきこえた。
 光の粒をはじくエナメルの背中をゆるやかに動かして、きつく握ったマイクを唇によせて、地べたから頭をもたげて、猶斗が歌っていた。
 滅びない歌を。
〈了〉
※初出 2001年12月「文学メルマ!」

飼い主ちょっとカゼ

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土曜日でも病院があいてて良かった

花粉症だと思ってたのに…(おばかさん)
お医者さん「いまみんな風邪ひいてるから、風邪だよ」って。
ううーそんな…
えとー…
カゼ流行ってるらしいです。みなさまもお気をつけてー。
猫なんとなくフキゲン。

ゼータガンダム2のパスネットを狙うのさ…

http://www.kotsu.metro.tokyo.jp/news/sub_n_20051013a.html

1. 名 称 機動戦士ZガンダムII-恋人たち-
2. 発売開始日 平成17年10月27日(木)
3. 発売枚数 限定10,000枚(台紙つき)
4. 発売金額 1,000円
5. 発売場所 都営地下鉄各駅
( 押上駅、目黒駅、白金台駅、白金高輪駅、新宿線新宿駅を除く)

主に自分用メモ。(山川さん&長井さんにもネ…)

ラッシュ 07

〈3〉
 白っぽい金色の髪をした猶斗がステージのへりに立つ。
 エナメルの黒い服を着て立っている。
 光が彼を追う。
 僕らのステージをつつんで冷たい鉄骨で組みあげられた一夜かぎりの架空の楼閣のように巨大なジャングルジムのあちこちからピンスポットの光線がぞろぞろと彼を追う。
 どうよ?
 僕は、いつものおどけた態度で彼に訊く。
 ちいさな綺麗な魚の群れみたいに猶斗を追っかける照明のやつらの声が僕らの頭上の鉄骨の隙間を行きかう。
 めまぐるしく背景の色を変えて本番前のテストをくりかえす。
「あァもう、ひでぇんだよ、注射の針スゴくてさ。皮膚にでかい穴あいたよ」
「注射うちゃ穴ァあくさ、普通」
「そッか」
 僕を見て猶斗が笑う。
「英治サンは物知りだなァ」
 そんな冗談をとばす。
 大量の人間の注目を浴びてその視線の刃で削られた彫刻のような顔を、僕は見る。
 研がれた顔だ。
 僕はしばらく、あんまり、それを近くで見ていない気がした。
 どんな顔のかたちだか忘れていた。
 猶斗はステージのへりに立つ。そこから客席との距離をはかるように眺めた。最前列にはおしよせる客を止めるための柵が立てられている。三メートルくらいの幅の、暗い虚無が、僕らの棲息するステージと彼らのあいだに開っている。
 そして猶斗はスポットライトの魚群をひきつれて、スタンドマイクの置かれた位置に戻る。マイクの足元に据えた黒いモニタースピーカーの外枠を、革のブーツのつまさきでかるく踏んで感じを確かめた。
「ノリコに聞いたけどさァ」
 猶斗が言う。
「英治サンいつも俺をロックスターって呼んでんだ?」
「なんだい。そんなこと聞くなや」
「イイね。ロックスターね」
 猶斗が言う。火照っている喉を右手の掌でつかむ。僕は彼の隣に立って、そこから、彼の喉を這う彼の指を見る。ショウ・マスト・ゴー・オン。彼は、平気で、笑っている。
 飽きない。
 僕らの眼が彼の肉を削っていく。
 研がれて、尖っていく。
「どうすッかな。歌えねかッたら、死んじゃうなァ。どうなッかな今日は」
 猶斗が言う。空言のように言う。
 彼の眼が見ている先を僕は見ない。猶斗の、水気の多い眼球の反射を僕は見ていた。ぎらついた眼だった。とても正気なんかじゃありゃしないと僕は思った。
「猶斗」
 僕は、彼の名前を呼んだ。
「カッコイイな」
 と言った。
 猶斗は僕を見て、なんだか、あたたかい父親の像のように、不思議な笑い方をした。得意げな子供のように、右手の人差し指を、僕の顔の鼻先につきつけた。
「惚れてンだな?」
 ナルシストだ。
 僕は、ちょっと可笑しい気分で、その僕の目の前にある猶斗の人差し指の先に、ぱくりと飢えた魚みたいに食いついた。爪に歯をあてて、指紋のあたりを舌で嘗めた。濡れた肉の味がした。猶斗が、くだらない悪戯を見たように、笑った。僕も、笑った。
 
 
   (続く)
※初出 2001年12月「文学メルマ!」